10分ストーリー

【フリー台本】世界で1番綺麗な宝石を君に

僕は、1人の女性に恋をした。

彼女は突然、僕に言った。

「世界で1番綺麗な宝石がほしいの」

僕はお金もなく、宝石なんて、買うお金は無かった。

僕の仕事は、農家である。

毎年同じ作業の繰り返し。

心が踊ることも、ときめく瞬間も無い。

唯一、曇った瞳に生を感じられる時といえば、

作物が元気に芽を出した時くらいだ。

そんな僕の目の前に現れた女性は、

見るからに都会に生きる女性という感じで。

華やかで、明るくて、そして、笑顔が素敵な女性だった。

彼女は、僕の農場で育てているイチゴを、自分が新しく出す飲食店で使いたいと、言っていた。

僕は彼女に恋をした。

その後、何度か食事に行くことになり、付き合い始めたんだ。

そして、1年が経った。

いま、僕は彼女からのお願いを、どう叶えてあげれば良いか、分からずにいた。

ある日の晩、空を見上げてると、綺麗な黄金の月が浮かんでいました。

丸くて金色で。

僕は、この月を彼女にプレゼントしたいと考えました。

しかし、当然のこと、月をプレゼントするなんて、できません。

僕は、できないことばかりだ。

落ち込みました。

あぁ、黄金に輝く月よ。

そこに、本当に、かぐや姫がいるのなら、会わせて下さい。

ただ、話がしたいのです。

大切な女性に喜んでもらうにはどうすればいいのか、教えてください。

僕は、彼女の笑顔が、見たいのです。

それは祈りなのか、ただ月を見上げて呟きました。

そして僕は帰路につこうとしました。

家に帰る途中、月の光に照らされた雲を見て、

気付いたんです。

真っ黒な雲でした。

すると、雨が降り始め、雷がなり、強い風が辺りを覆いました。

だんだんと雨風は強くなっていき、今まで経験をしたことのない、嵐がやってきました。

家につくと、イチゴ畑のハウスが、壊れていたのです。

僕は、彼女が好きだと言ってくれたイチゴを守ろうと、

無駄な抵抗を続けました。

もうやめてください。このイチゴ達を奪わないで下さい。

ずっと口にして、直らないハウスを、また建てようと抗っていました。

そこに、彼女がやってきました。

「記録的な台風だって、心配で来たの。見て、木も倒れてる。危ないから、家に入ろ?」

彼女は止めました。

僕は、彼女を唯一笑顔にできるイチゴだからと、手を止めませんでした。

彼女は、言いました。

「あなたは、私の笑顔が見たいと言うけれど、あなたに何かあったら、私は泣くわ。あなたが心配なら、私はずっと笑えないわ」

僕は、うなだれ、諦めました。

家に帰り、そこから記憶がありません。

翌朝、雨は上がっていました。

イチゴ畑を見に行くと、荒地となって僕を出迎えました。

これで、収入もない。

彼女が、僕に声をかけました。

「もう、あなたのイチゴは食べられないのね。」

僕は泣きそうになりました。

彼女は、生きていくためには、また1から始めないといけないと言いました。

何を育てようかと、僕が考えた、その時、彼女は言いました。

「お米を育てましょう。」

米なんて、育てたことがない。けど、彼女が笑って言うもんだから、僕は勉強しながら、稲を育てました。

秋になると、畑いっぱいに稲が育ちました。

夕方、4時くらい。

家で休んでいると、彼女が慌てた様子で僕のもとへ訪ねてきました。

「一緒に畑にきて!!いますぐ!!」

獣害にでもあったのかと、慌てて外へ出ると、

辺り一面、黄金の絨毯に覆われていました。

その先には、黄金の太陽が、地平線にピッタリとくっついていました。

彼女は、言いました。

「まるで、太陽の指輪みたい。世界で1番綺麗な宝石をプレゼントしてくれて、ありがとう」

おわり。

筆者:はりね。

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はりね。

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